
天神ビッグバンの今、不動産市場はどう変わるの?
福岡・天神では、「天神ビッグバン」による大規模な再開発が本格化しています。2026年3月末までに天神ビッグバンの対象エリアでは85棟が竣工し、2026年末までに約90棟、2030年代までには約120棟の建替えが予定されています。2025年にはONE FUKUOKA BLDG.が開業し、2026年には天神ビジネスセンターⅡも竣工・開業するなど、再開発は「計画段階」から「新しい街が実際に使われる段階」へ移っています。
一方で、再開発が進めば不動産価格が一律に上昇するわけではありません。2026年の地価公示では天神1丁目の一部地点で1,240万円/㎡となる一方、天神4丁目などでは前年比10%を超える上昇も確認されています。また、新築オフィスの大量供給によって空室率が一時的に上昇するなど、供給と需要のバランスを見ることも重要です。
この記事では、2026年10月時点で押さえておきたい天神ビッグバンの進捗、主要な再開発プロジェクト、地価・オフィス市場への影響、そして2030年代を見据えた福岡・天神の不動産市場についてわかりやすく解説します。
天神ビッグバンとは何か
天神ビッグバンは、福岡市が2015年2月から推進している天神地区の都市再開発です。単に古いビルを新しく建て替えるだけではなく、航空法による高さ制限の緩和や福岡市独自の容積率緩和制度などを活用し、耐震性や環境性能に優れた建物への更新、新たな雇用・空間の創出、歩行者空間や緑・広場などの都市機能の向上を同時に進めています。
対象エリアは、天神交差点を中心とした半径約500m、約80haの区域です。福岡市によると、2015年2月の開始から2026年3月末までに85棟が竣工しており、2026年末までに約90棟、2030年代までに約120棟の建替えが予定されています。
2026年の天神ビッグバンは、再開発によって建物が増えるだけでなく、ビルの建替えと歩行者空間・地下通路・広場などを組み合わせ、「街全体の使い勝手」を高める段階に入っています。
| 項目 | 2026年時点の状況 |
|---|---|
| 開始 | 2015年2月 |
| 対象エリア | 天神交差点を中心とした半径約500m・約80ha |
| 竣工棟数 | 85棟(2026年3月末時点) |
| 2026年末まで | 約90棟の建替えを予定 |
| 2030年代まで | 約120棟の建替えを予定 |
2026年の主要な再開発プロジェクト
2026年の天神では、すでに開業した大型施設と、これから開業する大型施設が同時に存在しています。特に重要なのが「ONE FUKUOKA BLDG.」「天神ビジネスセンターⅡ」「天神大樹」です。
ONE FUKUOKA BLDG.(ワンビル)
ONE FUKUOKA BLDG.は、旧福岡ビル、天神コア、天神ビブレを一体的に再開発した大型複合施設です。2025年4月24日に開業し、2026年時点では「これから完成する施設」ではなく、すでに天神の新しいランドマークとして営業しています。
地上19階・地下4階、建物高さ約97m、延床面積約14万7,000㎡という大規模な施設で、商業、オフィス、ホテル、カンファレンス、創業・イノベーション支援など多様な機能を備えています。5階の「天神福食堂」、スカイロビー、CIC FUKUOKA、ONE FUKUOKA HOTELなど、従来型のオフィスビルとは異なる複合的な使われ方が特徴です。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 開業 | 2025年4月24日 |
| 所在地 | 福岡市中央区天神一丁目11番1号 |
| 階数 | 地上19階・地下4階 |
| 高さ | 約97m |
| 延床面積 | 約147,000㎡ |
| 主な機能 | 商業・オフィス・ホテル・カンファレンス・イノベーション支援など |
不動産市場という観点では、ONE FUKUOKA BLDG.の開業は「大型ビルの建替えによってオフィス床が増える」という供給面だけでなく、商業・ホテル・交流・創業支援などを組み合わせることで、周辺への人流や企業集積を生み出す点が重要です。
天神ビジネスセンターⅡ
天神ビジネスセンターⅡは、福岡市役所北別館跡地を含む天神一丁目で整備された大型複合ビルです。旧記事では「2026年6月完成予定」としていましたが、2026年6月30日に竣工し、8月4日に開業しています。
地上18階・地下2階建てで、オフィス、商業、創業支援、ワーカー支援などを融合。地下2階から地上5階には7層吹抜けの「アクセラリウム」が設けられ、商業ゾーンには日本初出店1店、九州初出店6店、新業態4店を含む16店舗が決定しました。また、大型書店「ジュンク堂書店」の出店も発表されています。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 竣工 | 2026年6月30日 |
| 開業 | 2026年8月4日 |
| 階数 | 地上18階・地下2階 |
| 主な用途 | オフィス・商業・創業支援・ワーカー支援 |
| 特徴 | 7層吹抜け空間「アクセラリウム」 |
天神大樹(旧・天神1-7計画)
旧記事で「(仮称)天神1-7計画」としていた施設は、2026年8月31日に正式名称が「天神大樹(TENJIN TAIJU)」に決定しました。三菱地所が開発するオフィス・ホテル・商業の複合施設で、2026年12月末の竣工予定です。
敷地面積は約4,640㎡、延床面積は約73,960㎡、地上21階・地下4階、高さ約91mの規模です。「福岡文化生態系」を開発コンセプトとし、3階にはまちに開かれた交流空間「OPEN LOBBY」を整備。福岡のコーヒーブランド「manucoffee」や、働く人を支えるサービスなどが展開される予定です。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 正式名称 | 天神大樹(TENJIN TAIJU) |
| 竣工予定 | 2026年12月末 |
| 階数 | 地上21階・地下4階 |
| 高さ | 約91m |
| 延床面積 | 約73,960㎡ |
| 用途 | オフィス・ホテル・店舗 |
イムズ跡地など今後の開発
天神ビッグバンは2026年末で終了するわけではありません。福岡市は2030年代までに約120棟の建替えを予定しており、今後は複数の大型プロジェクトが街の構造をさらに変えていくことになります。
また、天神二丁目南ブロック駅前東西街区では、福岡パルコ、新天町商店街などを含むエリアについて、文化・芸術、商業、交流機能などを組み合わせた大規模な街区再編が計画されており、2030年度の開業を目指しています。
さらに、天神一丁目15・16番街区では約2.5haを対象とする第一種市街地再開発事業が都市計画決定されています。約119,000㎡の延べ面積を想定し、事務所、店舗、文化・交流、ホテルなどの複合的な都市機能を整備する計画です。
| プロジェクト | 2026年時点の状況 | 今後のポイント |
|---|---|---|
| ONE FUKUOKA BLDG. | 2025年4月開業済み | 商業・オフィス・ホテル・交流機能が稼働 |
| 天神ビジネスセンターⅡ | 2026年6月竣工・8月開業 | オフィス・商業・創業支援の新拠点 |
| 天神大樹 | 2026年12月末竣工予定 | オフィス・ホテル・商業の複合開発 |
| 天神二丁目南ブロック駅前東西街区 | 計画推進中 | 2030年度の開業を目指す |
| 天神一丁目15・16番街区 | 都市計画決定済み | 約2.5haの大規模再開発 |
不動産市場への影響と2026年の地価・オフィス市場
天神ビッグバンによる不動産市場への影響を考える際には、「地価」「オフィス賃貸市場」「商業・ホテル」「住宅」の4つに分けて見るとわかりやすくなります。
2026年の地価は上昇基調。ただし地点による差も大きい
2026年の地価公示では、天神1丁目11番1の標準地が1,240万円/㎡となり、前年から2.48%上昇しています。この地点はONE FUKUOKA BLDG.の所在地と一致します。
一方、天神4丁目2番34では296万円/㎡、前年比11.70%上昇、天神3丁目6番18付近でも10%を超える上昇率が確認されています。つまり、天神の地価は高水準を維持しながら、すべての地点が同じペースで上昇しているわけではありません。
中心部の一等地ではすでに土地価格が非常に高くなっているため、今後は「天神そのものの地価がどこまで上がるか」だけでなく、天神へのアクセスが良い周辺エリアへ需要が波及するかどうかも重要になります。
| 2026年公示地価の例 | 価格 | 前年比 |
|---|---|---|
| 天神1-11-1 | 1,240万円/㎡ | +2.48% |
| 天神2-7-6 | 718万円/㎡ | +1.41% |
| 天神4-2-34 | 296万円/㎡ | +11.70% |
| 天神3-6-18 | 173万円/㎡ | +10.90% |
オフィス市場は「需要が強いが、新規供給の影響も受ける」段階
オフィス市場では、天神ビッグバンによる大型ビルの竣工が続いているため、空室率だけを見て市場が悪化したと判断するのは適切ではありません。新築ビルへの移転によって既存ビルに空室が発生する一方、新築ビルではリーシングが進むという「移転の連鎖」が起こるためです。
2026年8月末の三幸エステートの調査では、福岡市の全規模ビルの空室率は4.37%、募集賃料は16,374円/坪でした。空室率は前月から0.07ポイント上昇していますが、幅広い業種でオフィス需要は活発な状況が続いています。
このため、2026年の天神オフィス市場は「空室率が低ければすべてのビルが好調」という単純な状況ではなく、立地・築年数・設備・賃料・フロア規模などによる二極化が進む可能性があります。
| 市場 | 2026年の見方 |
|---|---|
| 土地 | 高水準・上昇基調。ただし地点による差が大きい |
| オフィス | 需要は堅調。一方、新築大量供給で空室率は変動 |
| 商業 | 新大型施設の開業で人流・店舗需要の変化が期待される |
| ホテル | 新規開業によって宿泊・観光需要の受け皿が増加 |
| 住宅 | 都心居住・職住近接需要や周辺エリアへの波及に注目 |
総合すると、天神ビッグバンは不動産市場に対して「価格を直接押し上げる政策」というより、都市機能を更新することで企業・人・商業・観光などの需要を呼び込み、その結果として土地や賃貸不動産の価値に影響を与える取り組みと捉えるのが適切です。
2030年代の展望と不動産投資の可能性
2026年は天神ビッグバンにとって大きな節目ですが、再開発そのものが2026年で終わるわけではありません。福岡市によると、2030年代までに約120棟の建替えが予定されています。
そのため、今後の天神の不動産市場を見る場合は、2026年末までに完成する施設だけではなく、2030年度の開業を目指す天神二丁目南ブロック駅前東西街区や、都市計画決定された天神一丁目15・16番街区など、次の大型プロジェクトまで視野に入れる必要があります。
2026年以降に注目したい主なプロジェクト
| プロジェクト | 時期 | 不動産市場への意味 |
|---|---|---|
| 天神大樹 | 2026年12月末竣工予定 | オフィス・ホテル・商業の新規供給 |
| 天神二丁目南ブロック駅前東西街区 | 2030年度開業目標 | 天神中心部の商業・文化・歩行者ネットワークを再編 |
| 天神一丁目15・16番街区 | 計画推進中 | 約2.5haの大規模な複合再開発 |
| その他の天神ビッグバン対象建替え | 2030年代まで | 街全体の建物更新と都市機能向上 |
不動産投資では「天神だから上がる」と考えないことが重要
天神ビッグバンによって福岡の都市競争力が高まることは、不動産にとってプラス材料です。しかし、投資判断では「天神の再開発=必ず価格上昇」と考えるのは危険です。
土地価格がすでに高いエリアでは、購入価格が上昇すると利回りが低下する可能性があります。また、新築オフィスの供給が増えることで、築年数の古いビルとの競争が強まることも考えられます。
一方で、天神から徒歩圏・公共交通機関でアクセスしやすい周辺エリアでは、都心のオフィス・商業機能が強化されることによって住宅需要や店舗需要が波及する可能性があります。そのため、投資対象を探す際には「天神中心部だけ」ではなく、薬院・今泉・渡辺通・春吉・大名・舞鶴など周辺エリアを含めて、駅距離、用途地域、再開発計画、賃料水準などを比較することが重要です。
特に2026年以降は大型ビルの供給が続くため、オフィス・店舗・住宅のそれぞれで「どの場所でも同じように価値が上がる」という状況ではなくなる可能性があります。投資を検討する場合は、再開発によるプラス効果だけでなく、金利、建築費、賃料、空室率、物件取得価格なども合わせて判断することが大切です。
なお、福岡市では天神ビッグバンと並行して博多駅周辺の「博多コネクティッド」も進んでいます。2026年3月末時点で博多コネクティッドでは30棟が竣工し、2028年末までに約35棟の建替えが予定されています。天神と博多の双方で都市機能が強化されるため、福岡都心全体の不動産市場を考える際には、この2つの再開発を合わせて見ることも重要です。
2026年10月時点で注目したい3つの視点
| 視点 | チェックポイント |
|---|---|
| ① 再開発 | 新築ビルの開業時期、用途、テナント、歩行者空間の整備 |
| ② 市場 | 地価、オフィス空室率、募集・成約賃料、住宅賃料 |
| ③ 供給 | 今後の新築ビル供給と既存物件への競争圧力 |
まとめ
2026年の天神ビッグバンは、再開発の「計画」から、実際に新しい街が動き始める段階へと進んでいます。2015年2月の開始から2026年3月末までに85棟が竣工し、2026年末までに約90棟、2030年代までには約120棟の建替えが予定されています。
ONE FUKUOKA BLDG.は2025年4月に開業し、天神ビジネスセンターⅡも2026年8月に開業しました。さらに2026年末には天神大樹の竣工が予定され、2030年度には天神二丁目南ブロック駅前東西街区など、次の大型再開発も控えています。
不動産市場では、2026年の地価公示で天神1丁目の一部地点が1,240万円/㎡となるなど、天神の土地価格は高い水準にあります。一方、オフィス市場では大型ビルの新規供給によって空室率が変動しており、「再開発が進むからすべての不動産価格が上がる」と単純に考えることはできません。
これからの福岡・天神の不動産市場を見るうえでは、地価だけではなく、企業の進出、人流、商業施設の集客力、オフィス賃料、空室率、住宅需要、そして2030年代までの新規供給を総合的に見ることが重要です。
天神ビッグバンは2026年で終わるのではなく、今後も街の更新が続きます。天神で暮らす・働く・事業を行う人にとって、そして不動産を所有・購入・売却する人にとっても、今後の再開発スケジュールと市場データを継続的に確認していくことが重要になるでしょう。
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